化学結合

化学結合の種類

 化学結合は、原子が他の原子と電子の受け渡しをすることにより原子同士がくっついている。化学結合は大きく分けてイオン結合共有結合配位結合の3つに分類することができる。これらの結合の違いは、電子の受け渡し方の違いである。

電気陰性度

 化学結合を考えるうえで欠かせないのが電気陰性度である。電気陰性度は単純に言うと、原子が電子を引っ張る力のことである。電気陰性度が大きいほど、電子を引き付ける力が強くなる。周期表で族が大きく、周期が小さいほど電気陰性度も大きくなる。ただし、希ガスには電気陰性度はない。これは、希ガスは最外殻電子がすべて埋まっているため安定な電子配置をとるためである。よって、最も電気陰性度が強い原子はF(フッ素)である。

 電気陰性度は、ポーリング式やマリケン式、オールレッド・ロコウ式とそれぞれ定義が異なったものが存在し、それぞれ値が若干異なるが、最も使われるのがポーリングの電気陰性度である。

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ポーリングの電気陰性度

 この中で覚えておくべき原子は、H(2.1)、C(2.5)、N(3.0)、O(3.5)、F(4.0)である。覚え方は、Fが4.0と覚えておけば族が1つ下がるごとに0.5下がると覚えておけばいい。(水素はFと2.0以上の差がないと覚えておくと後に登場する水素結合と区別しやすくなる。)

イオン結合

 イオン結合は、陽イオンと陰イオンが静電的相互作用により引きあう結合である。

 では、静電的相互作用とはなにか?別の言い方ではクーロン力(F)ともいう。

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 q,q₂:粒子の電荷、ε:誘電率、r:粒子間距離

 イオン結語は、二つの原子の電気陰性度の差が大きいときに生じる結合である。電気陰性度が低い原子は電子を放出しやすいため陽イオンになりやすい。一方、電気陰性度が高い原子は電子を受け取りやすいため陰イオンになりやすい。陽イオンが放出する電子を陰イオンが受け取る形で結合している。具体的には、電気陰性度の差が2.0以上あればイオン結合していると考えることができる。

 例としては、NaClがある。NaとClの電気陰性度はそれぞれ、0.9と3.1である。この差は2.2であるため、クーロン力が大きく働きイオン結合しているということができる。

共有結合

 共有結合は、不対電子をもつ原子同士が電子を1つずつ出し合って電子対を形成し共有する結合である。

 この結合をもつ原子は電気陰性度が高いものが多く、互いの電子を引き付ける力が強いため、結合も強固になる。具体例として、O₂、H₂、H₂O、CO₂、CH₄などがある。

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 同じ原子同士の共有結合では電荷の偏りが生じないが、電気陰性度の異なる原子同士の共有結合では電荷の偏りが生じる。電気陰性度が大きいほうが負に、小さいほうが正に偏る。子の偏りをもつ性質を極性という。

配位結合

 配位結合は、原子がもつ非共有電子対が別の原子が持つ空軌道に入り込み、互いに電子を共有する結合である。

 電子を共有する点では共有結合と同じだが、他の原子の非共有電子対を受け入れるという点で異なる。電子を受け取る側が金属であれば、金属錯体となる。

水素結合

 これらの結合のほかにも分子相互作用による結合がある。その1つが分子間相互作用の一種である水素結合である。

 水素結合は、電気陰性度が特に大きい原子(F、O、N)と水素による結合である。

 水素結合は体内でタンパク質の高次構造DNAの塩基対形成に関与しており、重要な役割を持つ結合である。また、16族元素の水素化合物の沸点が高い理由にも水素結合が関与している。